動物の居る様な所でなけりゃあ生えない蜜柑なの。
 こーんなに太い蛇が居たり大きな鰐が居たり。
「どの位の大きさ。
「こんな小さいのもこんな大きいのも有るの。
 きまって居ないのさ。
 だけれどね、
 大きいの程術が沢山出来るの。
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 人指指と拇指でまるで針のめどの様な穴を作ったり、両手を後の方まで跳ね飛ばして非常な大きさを示しました。
 弟は一寸面白い顔をして居ますけれ共真面目なので、私の問いに答える時々にはきっと云う言葉さえ気をつけて居るかの様に落ついて居るのです。
 二人はゆるゆる芝の上を歩きながら話して居ます。
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「姉ちゃんにもくれない?
「さあ、
 一体ねこれは誰にも教えられない事なの。
 だけど姉ちゃんだから殊[#「殊」に「(ママ)」の注記]別にそんな金の蜜柑の有る事丈は教えてあげたんだけど……
 自分で見つけて来なけりゃあ。
 そいからねまだする事があるの。
 こないだ地図見たら太平洋の真中があんまり明きすぎてるからあすこへ一杯国を作ってやろうや。
 ね、そうしたら随分面白いだろうなあ。
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 手足をピンピ
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