噺に魂を奪われて居るのです。
 生れつき逞しい想像力を持って居るので時々すっかりお伽噺的な気持に成って仕舞って夢の様な事を云ったり考えたりする事が有るのですが、今も丁度そんな気持になったと見えて、突然如何にも衝動的に、
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「僕、術でもって人間を作って見せる。
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と大変威張って云い出しました。
 私は場所が異った珍らしさで種々に心の動かされて居る子供を興味深く見て居ます。
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「まあそうそりゃあ好い、
 どんな人間を作るの。
「奇麗な可愛い人。
 山島先生みたいな可愛い人を作るの。
(自分を毎日面倒見て下さる学校の先生の事なのです。)
「でもあんな大きい人許りでは仕様がないでしょう。
「うん。
 だから小さいのも作るの。
 そいでねそんな人をたくさん作って矢っ張り術で出した島に集まって、世界中で誰でも知って居る様な好い国を作るの。
「いい事ねえ姉ちゃんも住わせて頂戴。
 そいで術ってどんな術でそんなにいろんな事が出来るの。
「金の蜜柑を食べたもの。
 それはね西洋にあってね夏か春ごろなるのさ。
 不思議なんでね千万も種々な
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