でも一人残らずみんなデモに参加するんだ。
やがて遠くから音楽が聞えだした。ソラ! 出て見ろ!
町の角に立派な出来たての郵電省がある。幾条もの赤旗で飾られた正面玄関の石段に立って、群集と一緒に街の上手を見渡すと、来るゾ! 来るゾ!
赤旗につづく赤旗の波だ。
六列横隊で、自分達の工場音楽隊を先頭にして、行進曲と共にやって来る。愉快そうで、整然としていて、胸も躍る光景だ。
「五ヵ年計画ヲ四ヵ年デ!」
「ブルジョア反ソヴェト陰謀ヲブッ潰セ!」
次から次へ赤いプラカードが来る。あいまには、張物《はりもの》だ。ブルジョア、地主、坊主が、社会主義社会建設のために働くプロレタリアの鉄の鎚で、それぞれ頭をドッカン、ドッカンやつけられながら進んで来る。
ワーッ! と見物は喝采する。
先頭が赤い広場の入口で止った。後から後から、見える限り街は動かない赤旗だ。
「まだ赤い広場の閲兵式がすまないんだってさ。」
すると止ったデモの中に、いつかしら輪が出来て、元気な手拍子、口笛で昔からあるロシア踊りを若い連中がおどり出す。
向うの方でも負けてはいない。コーカサス地方の服装をした労働婦人が、長い白絹
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