それで質問者が果して納得するものであろうかと、寧ろ不思議にさえ思われる。
 ところが、いつぞや身の上相談の解答のこつ[#「こつ」に傍点]について興味ある言葉をきいた。それは、どうせ身の上相談に訴えて来るような女のひと達は、生活の上に自主性のない、決断力を欠いている人々である、だから余りはっきり社会的にそれを説明したって無駄であるし、また余りきっぱりした処置を示したところで却って喜ばず、新聞社としてもそういう解答は歓迎しない、まあ、当らずさわらずのところで納まるような妥協案を示すのが一番であるという意味であった。
 この言葉は二重に私の心に感じさせるものがあった。身の上相談の解答者となる女の先輩達は、そのことによって或る程度まで自身の社会的名声というようなものをも拡大するのであるが、上述のような世渡りのこつ[#「こつ」に傍点]めいたものが必要とされ、結局は、女が同じ女の愚かさで食うということになる。そこには、今日の女の愚かさ低さの上に、その涙の上に資産をつくっている大衆作家の自信ある暮しぶりを眺める時のような、ある心の痛み、憤りがあるのである。
 こういう半面に、「婦人の立場から」等には
前へ 次へ
全5ページ中3ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング