、素朴な表現や視野の不十分な明確さを示しながら、女として今日の社会に対し一般的に感じられている抗議が、案外健全なものの考え方、観かたの方向を暗示して語られている場合が決して尠くない。
折々婦人作家たちが、こういう場面で日常の社会問題をとりあげ、女としての土台から直接な気持で批判を行っているのは、今日同年輩の男の作家たちの社会時評とは遠い生活態度と対比して、様々の感想を喚びさまされる。
その国の進歩的な婦人作家たちが、その文筆活動の総体の何割を、文学以前の生活的な諸問題の究明のために費さなければならないかということで、凡そその国の社会情勢が推しはかれると思う。そして、その必要がどのような自由さで満され得ているかということで、その国の進歩性が推しはかられると思う。その点で、日本は今日の支那よりはおくれているのである。[#地付き]〔一九三七年五月〕
底本:「宮本百合子全集 第十四巻」新日本出版社
1979(昭和54)年7月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第5刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第九巻」河出書房
1952(昭和27)年8月発行
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