らしい壁紙などに囲まれていたら、心もさっぱり活々としますでしょう。
 私の家では人数も少いので、食事でも皆同じにしている位ですから、女中の部屋と云っても、時には楽しくお喋りに行けるようにして置きたく思います。

 此で、まあ必要な部屋の種類はあげたことになります。

 寝室つき書斎二つ、各々十畳に四畳半位ずつ。客間、十三四畳。食堂、十一二畳、配膳室三畳。台所、六畳位。浴室、五畳。女中部屋六七畳。総体で幾坪になりますか。出来るなら、簡素なハーフ・ティンバーの平屋にし、冬は家中を暖める丈の、暖房装置が欲しゅうございます。
 道路と庭との境は、低い常盤木の生垣とし、芝生の、こんもり樹木の繁った小径を、やや奥に引込んだ住居まで歩けたら、どんなに心持がよいでしょう。
 余り市中から遠くない半郊外で、相当に展望もあり、本でも読める樹蔭があると同時に、小さい野菜畑や、鶏でも飼う裏庭《ヤード》があったら、田園生活のすきな自分は如何程よろこぶでしょう。

 けれども、斯うやって、電車の音のする、古い八畳で、此を書いている以上、今までのすべては、全く私の理想だけであり、或は、空想だけで終るかもしれません。
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