書斎を中心にした家
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)置電燈《スタンド》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)書斎[#「書斎」に傍点]
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我々のように、二人とも机に向って仕事をする者は、若し理想を実現し得るなら、先ず静かなよい書斎を持ちたいのが希望です。
何も、壮麗でなく、材料が素晴らしいのではなくてよいから、各自の性格と、仕事の種類とに適応した勉強部屋が欲しい。一日の中、大部分は、其部屋の中に生活するのですから、客間、食堂、寝室などと云うものは、皆、勉強部屋での、深い緊張を緩める処、やや疲れた頭の慰安処として、考案されなければならないのです。
私は、直射する東や南の光線は大嫌いですから――少くとも勉強する時は――書斎[#「書斎」に傍点]は、北向でありたい。広い弓形の窓をとり、勿論洋風で、周囲にがっしりした木組みの書棚。壁は暗緑色の壁紙、天井壁の上部は純白、入口は小さくし、一歩其中に踏入ると、静かな光線や、落付いた家具の感じが、すっかり心を鎮め、大きく広い机の上の原稿紙が、自ら心を牽きつけ招くようにありた
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