い。
 壁に少し、愛する絵をかけ、ゆっくりと体をのばして考えに耽られる長椅子があり、一隅にピアノがあれば、私はすっかり満足するでしょう。
 附属部屋のようにし、重い垂帳で区切った小寝室が作られるのもよかろうと思います。私の寝起きは、不規則になり勝ちなので、疲れて居る者の邪魔をするのは気の毒であり、気兼ねをするのも、時には不自由に感じますから。
 寝室[#「寝室」に傍点]は、寝台(形は単純で、マットレス丈はよいの)、低いゆったりと鏡のついた化粧台。衣裳箪笥。壁はどんな色がよいか。此と云う思いつきもありませんけれども、置電燈《スタンド》丈で室内を照した時、そのシェードの色調によって、全体が、穏やかな、柔かい感じとなるものがよいでしょう。
 寝室だけは、絶対に朝、明けないうちから戸外の日光が入らなくしとうございます。眩しくて眼のさめるようなのは全く頭に悪いと思います。

 書斎は、何処やらどっしりしたのが好きですけれども、客間食堂[#「客間食堂」に傍点]は、真個にくつろいだ、愉快な処にしたく思います。
 気取って、金縁の椅子等を置いたのではなく、大きなやや古風なファイア・プレースでもあり、埋
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