、それに対して沈黙するか、悪い場合には、いや、実は新しいんでないことは分っていたんだ、と力無くつぶやきかねない。いわゆる新人にとっても、傍からそれを目撃するものにとっても、これは堪えるに容易でない一つの愚弄である。
文学的新世代の萌芽
真の文学的新世代の萌芽は、そのようなむずかしく、渡るに難い文壇大路小路の地図を知らず、知ることを要しない場所に、文壇人ではない普通の人々のこの人生に対する愛と抗議とのうちにむしろ蔵されている。今日のヒューマニズムの問題の底入れをしているところの勤労的人間の生活の中に潜められている。そして、真の新世代はこんにち、社会的矛盾の相剋の最悪の事情において闘いながら、その争いにともなって自身の文学を創ってゆかなければならない。そこには、先ず勤労人として生活しながら、文学を愛好する面では消費的で、従来の文学青年的であるというような撞著が克服されねばならず、その過程は歴史的にいかに多岐、多難で忍耐を要することであろうか。ゴーリキイの生涯を通観してもそのことは分明なのである。
深田氏の「強者連盟」を読んでも印象されたことであるが、一般的にこんにち
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