局面とかたく結ぼうとする意慾、現実では分裂の状態におかれている「知性と感性との統一、背馳している意識と行動とに人間的な統一を与え、すこやかに逞しい人生を発見し、創造しよう」と欲する感情において、ある光明的な脈動を感じさせるのである。誰しも、この響に向って期待する何物かが、わが胸のうちにあることを感じるのである。だが、実際の問題、行為の問題として見たとき、このヒューマニズムの核心的翹望である知性と感性、意識と行動との人間的統一は、こんにちの錯雑している実況の中からどういう方法によって実現され得るであろうかという質問が生じるのである。文学として社会的文学的の見とおしが与えられている。教養の方向として「鴎外、芥川的教養は、むしろ彼等にとっては知らねばならぬことの回避を意味し、現代的教養の放棄を意味する。」現代社会は頽廃しているというが、その頽廃の根源を看破することによって、作家は頽廃の性格から救われ、頽廃を克服することが可能である。青野氏は、かかる性質の教養こそ、知的探求こそ、現代の作家が必要としていることを主張することで、一層ヒューマニズムと作家との関係の具体性を示しているのである。
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