実を明瞭にしようとする時期を通っているのであると思う。
女性そのものの成長のそのような願いは激しく、しかも実に極々のむずかしさに遭遇していて、その表現としての文学作品にさえ、現代の婦人の生きる姿に蒙らされている何かの傷痕が見えている有様である。
子供のための本を書く女性というものの出現は、そのことがただ女であるからとか、物を書くのが好きだから、というだけで期待されたら、間違いであろうと思う。そのひとは、やはり人間の未来の発展というものについて一つの靭《つよ》い情熱を感じていなければ、何によりどころをおいて次の世代のつくりてである子供たちに希望をかけ、浄らかな焔を点し、目ざまさせてやることが出来るだろう。人間の精神の自然な合理の力を知らないで、どうして子供たちに、条理の明らかなものごとの美しさを語ることが出来るだろう。
子供の読みものを書く大人の感情のうちにある幾通りかの感傷を、これからのその分野で活動しようとする人々は、真面目に考察し直し、そのような沈湎の中から歩み立って来なければなるまいと思う。
大人は子供の世界を心に描くとき、現在大人として日々の生活に疲れもし痛みもしている
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