て、居馴染みかねるものがある。お嬢さんをきらい娘という呼びかたをこのむ心理はここにもお互に作用している。
そういううるささをさけて、じゃ、いっそどこそこで落合いましょうよ、ということになって、種々雑多な彼女たちが街頭に溢れて来る次第なのだ。
みじめっぽく小さい同胞《はらから》たちがごたついている小さい貧相なわが家なんかを友達に見せたくない職場の娘さんたちは、いろいろうるさい[#「いろいろうるさい」に傍点]家のそとで友達と会っている他の社会層の娘さんたちと、椅子をぶっつけ合いつつ、おしる粉をのみつつ、暫くの気焔を愉しむことになる。
自分の現実をそれなりに承認したくない心持、何かそこから自分としての生活をもって行きたい心持というものは、今日夥しい産業部門に働いている何十万という若い娘さんの心理に、やはり執拗に生きつづけている欲望だと思う。今日の現実は、彼女たちにも職業についているそのことが幸福だと直接に感じられる場合は極めてすくないにちがいない。家のためにも働き、いくらかは自分の生活へのゆとりをも持つ。そのゆとりから、若い娘として今あるがままでは承認出来ない自分の現実をかえてゆく何
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