れを好む好まないにかかわらずグングン女をひろいところへ押し出しているし、女の心持もいつしか女が好む好まないにかかわらず、変って来ていて、自分としての生活や成長にも思いをかけるようになっているのに、他の現実は男の古風な面、女のそれに準ずる面で実際条件の対決を迫っているのである。言葉をかえて云えば、今日の若い娘たちは、菊池寛の、娘は白紙がよいというモラルに一斉の抗議を表しながら、一方にそれをよしとする男を余りはっきり目撃することで動揺し、不安になり、結婚に対しても職業に対しても、あぶはちとらずな気持の地獄におち入るのである。
大きい買物、小さい買物という暮しぶりの娘さんがこの迷路に引きまわされた揚句、つまりは現状維持の気持に裾をとられてゆく過程は、誰の目にも見易いことであると思う。職業をもったということは、彼女たちに、自分のとれる金銭のたかを教え、同じ環境の青年たちの経済力の小ささを教え、逆効果として、大きい買物をまかせられる力の味を一層身にしみて感じさせる。自分の生きかたを外から眺めるだけの目をもたないある種の若い娘が、そういう力を背中にもっていることから自分が享楽出来ている様々の消費
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