くないのは人情だろうし、それを切りぬける自信は、とても私たちにはない」財産家には「娘の夢を育ててくれる金力がある。理想を徐々に実現してゆく余裕がある。ゆたかな生活はつまりゆたかな気持をいつまでも失わず」もし物資的に苦労のある生活で愛の破綻がきたとしたら女はいっそ何によってそれをいやす[#「いやす」に傍点]ことができよう。金があれば「愛情に破綻はあれ、まぎらす方法はいくらもある」故に金力ある良人を求める今日のさもしさが肯定されているのである。あそんで、さばけて、金のある青年を良人として「夢を育ててくれる」生活の条件として求める娘がその面においては「私たちは非常に現実的にからくなっているのだから」「何事にたいしても仮借しないむきな純一しか持ち合わせていない」と力をこめていい切って、しかも「娘の夢」といわれているもののロマンティックな扮装については自分の内の矛盾として見きわめようとしていない態度を、今日の青年もやはり彼らの夢を育ててくれる女性としてよろこびをもって見得る心理なのだろうか。
私は率直にいって大迫さんのように悧溌な娘さんが、まるきり自分の環境や欲求を外側から眺める力を欠いている
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