若い婦人の著書二つ
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)厭《うと》ましがる

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)あそび[#「あそび」に傍点]
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 いま、私の机の上に二冊の本がのっている。一冊は大迫倫子さんの『娘時代』、もう一冊は野沢富美子さんの『煉瓦女工』。この二冊の本は、それぞれ近頃ひろく読まれている本だと思う。だが、同じ娘としての生活をかいていながらこれらの本は、何と大きいちがいをもっていることだろう。若い女のひとによって書かれた二つの本をよむ人々は、ここにある生活の世界のちがいに対してどんな感想を抱いただろうか。『娘時代』はそれとして面白く『煉瓦女工』もそれとして面白い。ただそれだけを感想として読み終った人もあるかもしれない。けれども、今日の同じ日本の社会のなかからこういう相違をもった本をかく若い娘さんたちが出て来ていて、しかも、まるで互のちがった世界のなりに生き、互を知らないようにその生活のなかからそれぞれの本を生み出しているところには、何か私たちを考えさせるものがある。娘さんたちの文才というひとくちのなか
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