では窮屈だ、若いころの恋愛ならいくらあったって少しも縁談にさしつかえない、ただそのひとの純粋さえ失わなければそれでいいと思う、といい切っていることは、今日の娘がどんなに旧来の嫁、妻という境遇の束縛から自由になりたがっているかということと考え合わせ、さまざまの感想をそそられた。
独占的な、封鎖的な古風な男の愛情にとらえられて、おれの女房という狭く息苦しい囲いの中に入れられる生活への嫌悪と恐怖は、今日の娘たちに、いわゆるさばけた人を良人として求めさせている。だが、日本の社会の環境が負っている歴史の性質から、そのように近代の女としての空気を自分の周囲に求める娘たちが、まるでその本質は封建的なあそび[#「あそび」に傍点]でさばけた人というものをむしろ肯定しなければならないというのは、何という奇妙で不幸な矛盾であろう。その矛盾の歴史的なにがにがしさを、若い世代としての情熱ではじきかえさず、そこの間に横たわる矛盾こそがいかに大きく深い力で今日の娘たちを引おろしているものであるかも知らず、何かリアリストのようにいい切っている姿は、何と憫然で腹立たしいだろう。若いころの恋愛なら、とまるで結婚はしたい
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