うし、青年たちも公然とあるいはこっそりとこの本を読むだろう。
大迫さんの才気のある筆は、明快にときに皮肉に娘さん心理のいろいろな面を描き出しているのだけれど、私はひそかな疑問を感じた。娘さんたちはこの本をよんで、いろいろな点全くだわと共感しつつ同時に何となく物足りない底の足りないような感じを心のどこかに覚えるのではないだろうか。つまり、そこが現代の娘の感情の性格そのものだといわれてしまえば、それ迄のようなものだ。しかし、それでもそのままやっぱり引こんでしまえないようなものが読者の胸に後味としてのこされるのではないかと思う。
たとえば、若い年ごろの娘さんさえみれば結婚話にひきかけてゆく大人の通俗的なうるささに対して、今日の若い娘さんが厭《うと》ましがる心持は十分にうなずける。縁談の場合、男だけが虫のよい註文をつける腹立ち、仮装とトリックとで娘さんに対する仲人というものへの侮蔑の感情、それらはみな若い美しい潔癖であり、つよく娘さんの側から社会的な態度として主張されてゆかなければならない点であると思う。けれども、「お世辞だらけの縁談はまっぴら」というなかで大迫さんが、結婚の対手が石部金吉
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