な根のない廃頽に咲いているかを感じるのは当然と思う。それよりは、家庭にしっかり足をおいてゆける婦人をと望むのは自然であり健全でもある。
 しかしながら、その青年がひどく簡単に女のインテリ型と家庭的という二つをわけてしまって自分も安心している心理の、現代的なありようはどういうことであろうか。家庭的な女を妻に求めている現代の青年として自分のそのような心をちっとも自分では見ていないで対手だけを見ての要求としていっている、その気持のきめ[#「きめ」に傍点]の荒さに、今日の社会や文化のきめ[#「きめ」に傍点]の荒さがいかにもまざまざと反映しているように思われる。いうところのインテリ型というものと家庭的というものと、その二つの要素が女にとって別々のものではないではないかという程度の凝視もこの青年は試みていない。自分の外で移り変ってゆく風俗をでも語るように語っていて、自分の望みは理想なのか実際の便法なのか、その区分の自覚もされていない。要求そのものとしてはいかにもはっきりとしていて、しかもその要求をめぐってゆく心は何となし厚皮していて怠惰だという現代の低い心理を、青年のために悲しむのは私が作家だから
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