、数年前はインテリ型の婦人が求められていたようですが、今日は家庭的な婦人が求められるようになって来ていると思います、という答えがあって、何となし奥行きのある暗示を感じた。答えているのは専門学校出の青年であった。
この答えは何心なく書かれていて、しかも本人が自覚していない社会感情の今日の現実を示していると思った。数年前に求められていたインテリ型というのはどういう実際の内容が意味されているのかはっきりしないけれども、だいたいは読書を愛したり、音楽や映画にも趣味をもったり、いろいろ人生ということについて良人とも語り合いたい心をもった若い女のことというほどのことであろう。それに対して、昨今は家庭的な婦人が妻として求められているといえば、文学のことだの人生のことだのということはどうでもいいから、先ずスフの洗濯が上手で南京米をうまく炊いて、やりくりをともかく良人に苦労かけずにやってくれる妻、物価高の生活に耐えてくれる妻、そういう妻を求めている傾向だというわけであろう。
この希望には、確に今日の現実の根拠がある。生活に眼を開いている青年ならば、つまらない都会性やモダン性が、日本の経済の実情でどん
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