こさと金を溜めて、どうやら家を建てるより子供の教育だ、立派な子孫を残すために、小さい碌でもない財産を置くより子供の体にかけようと熱心に貯金していたら、それがどうでしょう、このごろは金の値打は百分の一になってしまったのです。人間らしい義理まで欠いて、つまり自分の人間らしさとひきかえにしてまで溜めたような金が大して役に立たない。食物もなくなって、百五十円のお米を毎日毎日三合ずつ子供に炊いて食べさせられやしないでしょう。どんなに善意をもっていたって、私ども一人一人の力では、もう到底家族を安全に守って行かれません。ところが、ソヴェトの家族の場合は、父親が工場へ行ったり勤め人だったら、労働組合に属している、それから息子も勤めているから労働組合に属している、娘も勤めて組合に属している、三人とも組合に属している。その上教育中の息子と娘とは有給の専門教育をうけられます。これらのひとびとは国民健康保険、養老年金、傷害保険、その他一年、二ヵ月の休暇や、いろいろな条件をもっています。お母さんが病気をしたり姙娠した場合は、働いている人の妻であり、勤労者の妻である、組合員の妻であるということで、組合から地区の病
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