素直な人なつこささえ歪めてしまうのです。ちょうど、それは嫌な結婚の対手についても、婦人の独立がまもられていないから、友達に逢えば年中ぐちをこぼしながら、ちゃんと人格をみとめ合った離婚も出来ないのと同じです。本当よ、それは。私どもの感情というものは型にはめられて、非常に家族の形をやかましくいって、世間態が悪いということを申します。家庭の感情が社会的になっていないのに、生みもしない子供を自分の子供のとおりに可愛がれというところに無理が生じます。家庭の形式をやかましく言いながら、その家庭の中で感情は自然さを失わされるのです。
わたしたちは、自分の家族を本当に安全に守って行くためにはどういうことを現在やっているでしょう。或るかたは、何とかして子供にちゃんとして将来役にたつ教育をさせて行きたいと貯金をされたと思います。金持なら金がありあまっておりましょうから無理じゃないのですが、われわれが貯金をすれば何処かに無理が来ます。食物で無理をしているとか、本を買うことを止めてしまうとか、義理を欠いているとか、人に親切をしなくなってしまっているとか。何処かで人間らしいあったかい人づきあいを欠いて、やっと
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