千数百人で第一位をなし、二十二歳が最高の率を示している。
 春ごろ、青少年労働者が浪費と悪所遊びに陥る傾向について諸方面からの関心が向けられた。つまりは、いくらか余分の金が入ることと、健全な慰安が日常生活に失われていることとから悪遊びを覚えた青年たちが、ついに職業をもちながら、物とりまでもするようになることもあろう。二千九百七十六名という竊盗事件の全部が、そのような原因によるものばかりでないことは常識から明かに推察される。何がこれらの青年たちを竊盗の罪に追い入れたのだろう。
 生活新体制へ婦人のさまざまな力が役立てられてゆくのであるが、こういう傷ましい社会の現象に対して母性の心は痛みなしにはあり得ないと思う。母の思いはわが子の上にばかりかばい注がれる時代をすでに一歩あゆみ出している。母心の叡智も個人的なものからよりひろいものに向けられる実践力となる必要がある。

        七 子供と家庭

 お米のありがたさがいよいよ切実に身にしみて来た。きのう北海道から知り合いのお婆さんが上京して来ていろいろ話の末、お米のことになったら、わしらと子供は一日一合八勺ですといかにも淋しそうな表情で
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