か。
世間の人気の動きというものこそ時代の甘くて辛い裏表を瞬間のうちに表現するのだから、女を人前でいためつけるという一つのあらわれも、決してかるがるしく見すごさせる社会現象ではない。ましてや、女が昨今のような社会の生産のために働いているとき、それと並んで女に対する封建的なあらあらしさが公然横行するとすれば、その何かの徴候として戒心されるべき社会的な意味があるのである。
六 社会への母心
去年の冬、私たちに忘られない経験を与えた木炭も、この秋からは切符制になって、不正と不安とを一掃する方策が立てられた。あらゆる面で、一般の生活の最低限の安定を保とうとする努力が、新しい政府へ向けられている一つの要望と共力との焦点であろうと思われる。
橋田文相が、まず小学校教員の待遇改善の問題をとりあげているのも、このことを語っているのだろう。
けれども、本年に入って、青少年の犯罪の増したことは、世人に深い反省を求める現代の事実ではなかろうか。この半年に青少年の犯罪は一万を突破して昨年後半期より二千百二十六名の増加であり、筆頭が竊盗《せっとう》。そして、職業別にみると、有職者が六
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