多く、高く高くと青線は下から昇りつめるのに、体温は、命数のつきるにしたがって、低く低くと衰えて来て、終に十の字に、ぶっちがえになる。医者は、これを致命的危険のシムボルとするのである。人民の貯蓄は、昨年末から、大干潮のように減少しつづけた。反対に、物価は、上へ、上へと、のぼりつめて、二本の線を、もすこしのばせば、其は完全な十の字となってぶっちがうところ迄来た。モラトリアムをしくしか、政府のうつべき手はなかったのである。
 けれども、モラトリアムの噂がひろがり、それが実現したニュースをきいたとき、私たちのこころには、数々の疑問が生じた。
 モラトリアムをしかなければならなくなる迄に、政府は、どんなことをして来たか。疑問というのはこのことなのである。
 さきにふれたように、政府はインフレーション防止という名目で、戦時利得税、財産税を公表したりした。しかし実行に着手しないで、時を過して来た。この間に、財閥、金もちたちは、十分脱税の方法と、財産隠匿をする時間を与えられた。事実、この税案が公表されてから後、それらの人々の濫費のために、目に見えて物価は高くなり、インフレーションは増大したのであった。
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