。其故六人家族ならば千二百円の生計が出来て、これ迄よりよいという風な解説が、どの新聞にも出されたのであった。
 式は余り明瞭に、まるですべての人の生計がそっくりその通りであるかのように示されたので、私たちは何となしそれを自分たちの実際だと勘ちがいしそうであった。しかし、落付いて考えてみると、この式は、何と魔術の式だろう。
 第一、いつの間に日本じゅうの給料が、五百円平均と定ったのだろう。私たちは、つい先頃、政府が男子三十歳――五十歳、最低賃銀四百五十円、女子百五十円と発表したことを覚えている。最低として四百五十円がきめられたのであってみれば、実際の給料の大部分は、決して其額にも達していないことを物語っている。五百円の最高給料というとき、まして其がモラトリアムの下では、全人口の僅か何割かを占める少数者の給料を代表していることが発見されるのである。
 一軒の世帯主が婦人であることは、今日ざらだと思う。戦死者の未亡人、まだ帰って来ない軍人、海外在留民の家庭が、婦人の勤労によって支えられていることは普通としなければなるまい。この場合、最低百五十円と、男の三分の一にきめられた婦人の差別的な賃銀は
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