する国際的な研究結論が発表された。それによって、日本のブルジョア革命は未完成であることが結論された。天皇制支配、土地関係その他封建的資本主義の国である日本は、明治維新において、ブルジョア民主主義を確立しえていないことが明瞭に示されたのであった。
この三二年に、日本はみずからの社会をそのようなものとして客観的に見いだしたと同時に、ソヴェトの第一次五ヵ年計画によって自然ひき出されてきた社会主義的リアリズムの問題をうけとった。さらに、この年の春、日本の急進的文化団体への大規模の暴圧があり、治安維持法は政党以外の大衆的な団体も同列に罰することになった。
この錯雑した諸事情がからみあって、どんな紛糾を生じたかは誰にもよく想像されるであろうと思う。社会主義リアリズムの問題はそのものとして、治安維持法の改悪からひきおこされたさけがたい恐慌は恐慌として、率直明白に別な二つの問題として取扱うところまで、当時のプロレタリア文学者たちは社会人として、理論的に成熟していなかった。悪法によって恐慌する人間の自然なこころを、そのまま主張するのが、階級的な文学の声であると知るところまで、文学的に成長もしていなか
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