現実そのものが歴史を語るのだという主張のように説明された。バルザックは王権主義者であったにもかかわらず、彼の作品は当時のフランス資本主義発展のくまなき鏡である、とマルクスもいっているというふうな説明が行われたのであった。

 きょうもまた、この古き地点からそのままひきうつして世界観の問題や創作方法のことを語る若い人々がある。
 プロレタリア文学の新しい民主主義文学との生けるつながりが明らかとなるにつれ、新しい民主主義がすでにその前脚をかけている社会主義への道が明らかとなった。わたしたちの今日の創作方法として、いきなり社会主義的リアリズムだけをとりたてることは、たとえていえば、やがて摘める葡萄の房ばかりを話すようなものだと思える。その房に届くまでに脚たつがいるのか踏台がいるのか、なにかの過程がいる。新しい民主主義の全延長における背景的部分、半封建的なものとのたたかいの部分に照応する活かされかたが当然いると思う。それはなんとまとめて表現されるべきだろうか。現実を発展の過程において理解し、描き、かぎりない発展の可能をもつ民主主義の前途に期待する意味で、私たちは進歩的なリアリズムの創作方法に、
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