、自分たちにとってさえもそれは新しい文学の自覚であった。こなされるには時間がいった。かさなる苦労がいった。少くとも、一人の作家としての私自身にとってはそうなのであった。
今年のはじめソヴェト同盟からシーモノフ、ゴルバートフその他四人ほどの作家が来た。そのとき、いろいろの作家がこれらのお客をとりかこんで文学を中心とする座談会をもった。そして、特別な関心をもって、現在ソヴェト同盟に行われている芸術の創作方法はどういうものであるか、と日本の作家から質問を出されている。シーモノフは、ていねいに、現在ソヴェト同盟の芸術創作方法は社会主義的リアリズムであると答えた。それにつけ加えて、社会主義的リアリズムというのは、一定のグループが自説を押しつける強制的なものではないし、それぞれの国がそれぞれの社会の現実に即して、人民が人民のための文学をつくってゆくことを意味するという註釈をくりかえした。質問者は、シーモノフがゆったりした様子で坐りながら自明なこととして話すこれらの説明に満足したらしかった。
傍でそれらの問答をきいていてさまざまの感想にうたれた。ソヴェトの若い文学の世代、ピオニェールからコムソモ
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