切り角は、キラリと鋭く覆いがたく、その現象の本質をひらめかせている。
私たちは、直感にひかれ、情につきつめて、現象のギリギリのからくりまでを発見しなくては、芸術の欲望がしずめられないのである。
世界観は、眼という表現でいわれてきた、そのものの科学的あらわしかたであると思う。この社会とそこに起伏する人生にたいしてどういう眼をもって生きているか、そのことである。このことが、つまりは往来いっぱいにころがっている「小説の種」から、作家にその人の題材というものを選択させる。その作家の人生に通じるテーマを見いだしたとき、その作家の全存在を集中する精気のこった活動としてモティーヴがはっきり把えられ、労作がはじまるのであると思う。
世界観は、鋭く美しい活きた社会とその歴史にたいする眼として紹介されなかった。日本の主情的な文学伝統にとっては、よその言葉のような言葉で提出されたっぱなしであった。
作家こそ、生活と創作の経験を通して、わが身、わが作品でこなした世界観とはどういうものであるかを語りうるはずであった。けれども、十数年前の作家、それらの諸課題に本気でかかわりあった作家たちは経験において若く
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