五年以上働いた資格がなければ入学させない。四十人の生徒が二年後はトラクター技師として働くために勉強中だが、なかに八人、女生徒がいる。みんな金属工場から志願し、選抜されて来ている連中だ。大柄な、頼もしい婦人青年同盟員《コムソモールカ》たちだ。
 寄宿舎を、やはり女で、政治的活動をやっている同志に案内されて見学したとき彼女は、或ひとつのドアを外からコツコツと叩いた。内から元気な若い女の声が答えた。
「おあけなさい!」
「今日は! 日本から来た作家に、われわれの生活ぶりを見せてあげようと思ってね」
「ようこそ!……どうです? なかなかいいでしょう?」
 ひろい一室に二つキチンと片づいた寝台がある。本棚がある。小ぢんまりした化粧台がある。壁にクルプスカヤとレーニンの肖像画がはってある。
「わたし共のところはまだ女の学生がすくないんです。だから今のところ、あっちや、こっちに、こうして室をもっているのです」
 ソヴェト同盟では、ピオニェールの野営、林間学校から、専門学校、大学まで寄宿舎は男女共同だ。
 数が半々だと、女生徒は階下、男生徒は二階という工合に、分れて寝室をもっている。食堂、勉強室、クラ
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