の糖分の必要さえ示そうとしなかった政府と栄養専門家、医者たちの軍事的御用根性について、この際正直に反省してほしい。
平和な日本をうちたててゆくということは御都合主義で、あっちの風がふけばそう靡《なび》き、こっちの風がふけば、こうなびく無責任さでは実現されない。科学上の真実は、社会の実際にそれが変化してあらわれるからこそ、動かしがたい真実として存在しなければならない。砂糖の必要量がとれない条件があるからこそ、適量の必要が科学的に主張されなければならない。日本の主婦の科学精神がめざまされなければならないとしきりに云われる。科学の精神とは、決して食品のカロリー分析の能力ばかりをさしていない。砂糖を食品として科学的に理解するとともに、その砂糖が今日の社会で、どういうありかたをして来ているか、ということについて発見し、それをほんとに民族生活の幸福のために、合理的に調整してゆく実力も、明日の女性の人間叡智の内容となって行かなければならないと思う。
わたしの身辺に、子供を二人ぐらいもって戦争未亡人になっている婦人が、なんとどっさりあるだろう。先ずわたしの弟妹からはじまって。――平和になってから
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