います。長良の橋の人柱といえば伝説に名高く、文学にも有名です。ただ一人の人が難工事の長良川の橋工事の人柱となってさえ、その事業に従う人々の真剣さがちがってきて、橋は完成されました。日本の人民が殆ど一戸一戸から一人二人の人柱を出した日本の民主化の途がちょっとたりとも貴重でないとはいえません。私達の足は私達の愛する者の屍の上に立っています。この貴い歴史のあゆみをいいかげんな代議士共の口先でごまかされることはまっぴらです。
二
日本の民主化がいわれてから一年半ほどたちます。婦人が選挙に参加してから一年がたちます。しかし婦人の生活に重くのしかかっている封建性はなかなかとりのぞかれないといわれています。封建性とは何でしょう。
毎朝日本の総ての婦人はどんな燃料で、どれだけの時間をかけて、どんな代用食を作っているでしょうか。私達の使っている燃料とその燃料が使えるようなかまど、いもや粉の代用食、これ等総ては近代的でしょうか。私達のおばあさん、ひいおばあさん達がまぶたをただらせてくすぶらせたその台所の生活が一九四七年の日本の首府東京の家々の台所となっています。婦人の封建性とい
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