に、挙国一致して「耐乏生活」をやりとげてくださいと説いてまわったと同じような「耐乏生活」の泣きおとしです。今日彼女達はいいます。「戦時中あれほどの犠牲にたえた婦人の皆さん、どうぞあのときを想い出して窮乏に耐えて下さい。」しかし、あのときを思い出せということは戦争で殺された夫と兄弟、父親、息子を想い出すことです。忍耐深い日本の女性の努力と涙でしのいだ年月は、その結果として社会生活の全面と愛を破壊しました。日本の幾百万の女性は今日婦人代議士のある人々がいうとおりはっきり目を開いて戦時中を思い出しましょう。そこにどんなむごい過労と悲しみと淋しさとはかない希望とがあったかを思い出しましょう。そのはかない希望が幾百万の女の胸の中で打砕かれたかというその事実を一つ一つ思い出しましょう。そして思い出したとき、苦労でかしこくなった日本の婦人の心にはどんな考えがうかぶでしょう。だれにしろまたあのときをそのまま繰返えすには自分達のはらった犠牲があまり多かったことを知るのです。自分達の失われた愛にかけて少しは理屈にかなった人間らしい生活をうちたてたいと思います。日本の人民の民主化の途には数百万の人柱がたって
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