うという努力がつづけられており、中野重治氏「汽車の罐焚き」徳永直氏「飛行機小僧」「八年制」「はたらく一家」窪川稲子氏「新しき義務」宮本百合子「雑沓」にはじまる長篇への試み等が現れた。島木健作氏が、農民組合活動における今日の諸タイプを描いた「再建」は単行本として出版されて各方面に印象を与えて間もなく発禁となり、「生活の探求」は、書下し長篇小説として出版された。「八年制」も「汽車の罐焚き」も好評を得た作品であり、それぞれその作者らしさの溢れたものであったが、例えば「八年制」と同じ作者の「心中し損ねた女」「作家の真実」雑誌『新文化』に執筆された同じ作者の感想等をよみ合わせると、読者は、日常の生活感情と云われるものの内的要素やその質について、複雑な歴史の投影を感じざるを得ないのである。中野重治氏の「汽車の罐焚き」「原の欅」と幾多執筆された文学についての評論とは、その相互的関係において眺めて、やはり、今日この種の作家のおかれている条件の主観的客観的のむずかしさが痛感せしめられる。
本年の後半に入って、これまで描写のうしろにねてはいられないと、独特の話術をもって作品を送っていた高見順氏が「外資会
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