今日の文学の展望
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)その頃|流行《はや》った
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)その頃|流行《はや》った
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)文壇的※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]ァキウム
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過去への瞥見
今日の日本文学のありようは、極めて複雑である。そのいりくんだ縦横のいきさつを明瞭に理解するために、私たちは一応過去にさかのぼって、この三四年来日本の文学が経て来た道のあらましを顧みることが便利であろうと思う。
既に知られているとおり、日本の一般的な社会情勢は昭和六年の秋、満州事変というものが起ってから万般非常に急速な変化を生じた。過去十年に亙って日本の民衆生活の歴史に深い意義をもって来た組織は根本的にこわれたし、プロレタリア文学運動も、昭和八年末には運動としてまとまった形態での活動力を喪ったのである。
左翼の歴史が何故そのように急な興隆と急な退潮とを余儀な
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