解上まことに重大であるにかかわらず、日本へはその客観的条件をぼんやりとさせて、一方的に、云い得べくんばN・R・Fの伝統の面に立ってだけ、紹介されたことである。当時のフランスの諸事情はもとより強力な背景として説明されているのであるが、統一的な文化上の目的のためには、それぞれの思想的傾向の中にふくまれている本質上の相異まで全く帳消しにして仕舞われたかのように紹介された。
次で重要なことは、「行動のヒューマニズム」が、超階級の箇人主義的であること、左右両翼に対して本質では知性の独立を期していることである。そして反主知的・反合理主義的立場にあること等が、当時日本のプロレタリア文学の敗北につれて自身の動向をも失いつつ猶その世界観と文学とに反撥していた知識人を「行動主義」文学理論へひきつけた一つの、だが最もつよい可能性となっていたことである。
日本の市民の経済力と文化の低さとは、現代でも諸方面に所謂種本の貴重性をのこしている。フランスの文化運動の全貌に関する一般文化人の常識は、謂わば種本の数の尠なさに比例した狭さであったから、「行動のヒューマニズム」に就ても、上述のような紹介の角度によって、さ
前へ
次へ
全89ページ中21ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング