文化の様相を決定するのは生産力である」という社会の事実である。
さて、前述のように、人間社会の生産力の発達につれて、今日まで発達して来た文化をおおまかにさかのぼってみると、まず始めに原始的文化があり、古代的、封建的文化の時代を経て近代資本主義的文化を持つ今日、という風に分けられると思う。ここでわれわれの非常な興味を引くことは、例えば同じ徳川時代の封建的文化といっても、そこには上方文化即ち貴族、武士の文化と江戸大阪などの町人文化とが存在したことである。これは疑いもなく武士や貴族が能や円山派の大名好みの絵などを好んだに対して、当時斬り捨て御免の境遇におかれてあった町人がその生活から決して彼らと同じ趣味を持つことができず、独特の文学や音楽、芝居などを作った証拠である。同じ封建時代でも威張るものと、威張られるものとの感情の中にはそれだけあきらかに社会生活における一致しない利害が反映しているのである。
そして、又どういう時代においても利害を異にして対立する階級の文化が、同じ権利で社会の上に現われて来るということはない。必ず当時の支配階級の文化が、独裁的な形態をとって現れるのが常である。有名
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