驍アとを示すと同時に、その対象となる個人の社会的利益のために少くないマイナスであると思われる。何故ならば、一人の民主的な社会活動家が、進駐先の諸新聞に半封建的な権威をもって扱われているのをみれば、本国の民主的有識者はそのような状況に対して批評なしにはいられないであろうから。日本の新聞人は、世界の新聞人の精神的確固性にまで解放される必要がある。
今日の日本人民は英字新聞『ニッポン・タイムズ』や、もし事情が許すならば『スターズ・アンド・ストライプス』などを併読しなければ自分の国の事情についても充分に知ることは出来ない。しかし人口の過半数は英語のよめない人々である。日本の民主化の困難はここにもある。
労働組合が組合新聞を発行するようになったことも日本では新しい民主的な現象である。産別機関紙『労働戦線』、総同盟機関紙『労働』その他多くが発刊されている。
従来日本の専門学校および大学で新聞学科の学生が中心となって編集した新聞を発行し、それは学内ばかりでなく一般に読まれていた。『帝大新聞』、『三田新聞』、『法政大学新聞』、『関西学院新聞』、商大の『一橋新聞』等は代表的なものであった。ところが戦争がすすむにつれ若い有識人を戦争に対する非協力な精神状態から極力戦争へ動員するために、また残酷な学徒動員のシステムを青春のヒロイズムにすりかえるために大学新聞は次第に官報的統制におかれた。学生新聞として本質的な理性の声が封じられた。そして太平洋戦争に入る頃から学生新聞は全般的に廃刊された。
一九四六年の中頃から学生新聞の再刊に着手された。今日では従来代表的であった諸新聞のほかに他の学校でも用紙の許すかぎり自分達の学生新聞を発刊しつつある。
児童のための新聞として次のようなものがある。日本教員組合が発行している『こどもの声』のほか『学童新聞』、『少年少女新聞』、中等学校初級向きの『ジュニア・タイムス』その他がある。
現在日本で発行されている外国人経営の新聞は左の通りである。
『スターズ・アンド・ストライプス』(GHQ)、『ビーコン』(英連邦占領軍)、『中華日報』(中国人経営日本語版)、『国際タイムス』(朝鮮人経営日本語版)、(朝鮮人経営朝鮮語版)、『国際新聞』(中国人経営)、『自由日報』(同上)
在日特派員クラブは現在六十一名の会員をもっている。
新聞用紙不足は一九四七年に入
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