スために、紙面が沈滞の傾向をたどり、経営者が発言権を回復した。読売新聞社の第二次の争議勃発とその結末とはこの時期の新聞界の波のさしひきを代表的に示している。特筆すべきことはこの期間に各種労働組合の機関紙が発刊されはじめたことである。
これまでの日本にはなかった文化新聞も発刊されはじめた。日本民主主義文化連盟発行の『文化タイムズ』、人民新聞社『人民しんぶん』、青年新聞社『青年新聞』、YWCAの機関紙『女性新聞』。
婦人のための新聞が発行されはじめたことは婦人の参政権獲得と婦人の生活の民主化のために注目されなければならない。やや保守的な傾向のもとに編集されている『日本婦人新聞』のほか日本の民主化にひろく貢献するために発行されている『婦人民主新聞』がある。
盲人のための点字新聞は戦盲者のために重要な必要があるが、これは毎日新聞社発行の一種類しかない。
子供のための新聞は『子ども朝日』、『学童新聞』、『こどもの声』『少年少女新聞』等が発行されている。
グラフィックが流行していることも注目される。『サン・ニュース』はその一つである。
第三期[#「第三期」はゴシック体] 各新聞社は確実な営利事業である経済的利益を守るために、第一期の活溌な民主化への協力的態度をすてて意識的に保守勢力に追随し後退した。一九四五年九月に発表された日本への「新聞紙法」―プレス・コードは日本のすべての新聞に報道の真実を守り民主的な新聞の責任を示した十箇条から成りたっていた。第三期に入ってからプレス・コードは日本政府の微妙な形での統制と、その時どきの政権にとって有利の方向へ輿論をおしながしてゆく便宜のために利用される傾きが明らかに見られるようになった。各新聞は、国際政経記事において貧弱である。諸外国の新聞の報道に遅れていることはもとより、報道そのものが往々「報道の真実」である客観的な国際現実をゆがめていることもある。戦争中の御用新聞であったときの習慣である卑屈さと、半封建的な権力への屈従の因習が清算されていない。そのために、民主国の大統領の写真や言説が、最近まで天皇を扱ったような時代錯誤的な取扱いをされたり、日本における連合軍の首脳者が、天皇のような半封建的空気につつまれて新聞紙上に扱われたりする場合もある。このような現象は、日本の新聞人の神経が外国の新聞読者にみられない屈従の習慣をもってい
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