翔んだとして、ニグロの女として彼女の運命の本質は些も改善されなかった。
今日の生活の文化は、このようないきさつで、白粉の箱一つにも絡まれている。それを、私たちは果してよく感じとり理解していると云えるだろうか。
現在の世界の文明が到達している技術と資源開発の程度でさえも、地球は今日の全人口の四倍を、それも良好な生活水準で維持することが出来ると、学者は云っているそうだ。それだのに、今日世界の大部分がひどい食料制限をして、私たちはさつまいもを買うのにも苦心している。そこにも生活の文化の大きい問題がある筈ではなかろうか。
このように、現在私たちの文化の実体は益々世界的な関係で充たされて来ているのであるけれども、それなら今日自由に外国の事情を知ることが出来るかというと、それは大きい困難に面している。洋書の輸入は為替その他の理由で特別な狭い範囲だけ許されていて、一般の人の勝手には行かない。益々一般の文化が世界を知りたいのに、それを知る方法を有っているのは特殊な少数ということになって来ている。
それなら眼を国内に向けて、せめては身のまわりの出来事をよく知り会得したいと思う。だけれども、飾らず
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