ると男二百四十万人ばかりに対して女は百五十万人ばかりであるらしいけれども、朝日年鑑は昭和十四年版も十五年版も、同じ統計を転載しているから、実際の数の上では特にこの一二年間ずっと婦人の有職者が増して来ていることが察しられる。それらの女のひとの中にどの位の割合で戸主がいるだろう。
戸主ということになると四百万票減るのだそうである。
日本の社会の習俗のなかで、女の戸主というものは実に複雑な立場を経験していると思う。友達のなかに三人ほど戸主である女性があって、そのひとたちの生活もいりくんだものとなっている。
女で戸主と云えば家つきの娘というわけになって、結婚の問題では千々に心を砕く有様である。
結婚というものが、家の後を立てるという周囲の習慣的な感情からせき立てられることも、若い女性の今日の生活に向っている心には一かたならない負担である。養子として良人を見つけなければならないという条件にも苦しいところがある。粉糖三合もったら養子に行くな、という云いならわしは一面で世情の機微を穿っていて、いくらかの財産があればあったで無ければ無いで、養う親ぐるみ娘を貰わなければならない次第が、結婚をむつ
前へ
次へ
全12ページ中9ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング