間眠ると一通りは眠ったことになるらしいのね。暫くパチクリして、ああ何と伸々していいのだろうと、床の中でうれしくのびたりちぢんだりして、雨戸すこし明け、朝の空気入れて又眠りました、すると、中條サン、中條サンと裏の画伯の妻君の声で、おきて手すりから見下すと、満開の山吹のしげみを背景に「ボークー演習」と小さい声で怒鳴ってくれました。「あら! 今日になったの」「そうですって」そこで遑てて紺モンペはいてへんな布かぶって、かけ出しました。七時半から九時半まで。きのうだったのよ。きのうは国が居りましたから「たまに出た方がいいわ」「うん」というわけだったのが、七時にサーッと降って来ました、それでおやめ。十時に晴々とした天気になりました。「いいとき降ったネエ」しんから嬉しそうです、というのは十一時五十五分でカバン二つ両手にもって水筒さげて開成山へ立ったからです。すんだと思っていたのよ、ですから。でもいいあんばいに大したことはなくて終了。しかし、きょうは防空壕の検査があるといので、モンペはぬがずいると、十時半ごろ警防団員、警察官三人で来ました。「ああ、これなら安全です」よかったけれど、バクダンは、これらの
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