もなくて、顔つきもこの写真帳の女のようだったわ。ふしぎな女。医者でしたが。
十七日、きょうもいい天気です。美しい光線です。けさ新聞に、林町と道灌山の間が建物疎開地域になって居ります、そうでしょう、このあたりは入りくんで人が一人やっと通れるような道で抜けていたりしますから。それからあの動坂と林町の間のゴチャゴチャ区域。あすこも危険地帯です。本郷は菊坂辺もそうの由、わかりますね。林町の裏には大きい貯水池が出来て居りますが。
喉は、夜中に湿布してきょうは快方ながら油断無用と申すところ。明日ドラ声女房で現れないためにね。二人あそび終り。
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[自注8]アホートヌイ・リャード――百合子がソヴェト同盟滞在中に知った場所。
[自注9]西からかえったら――百合子が西ヨーロッパからソヴェト同盟へもどったこと。
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四月三十日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕
四月三十日
きょうは、又、のんびり二人遊びで暮そうと金曜日から楽しみにして、先ずその前祝いとして昨夜は九時に床につきました。全くぐっすり五時間ほど眠って一寸目がさめ、ぐっすり五時
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