獄中への手紙
一九四四年(昭和十九年)
宮本百合子

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)騎《の》って

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)五年前|熱川《あたがわ》にいた

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#二の字点、1−2−22]

〓:欠字 底本で不明の文字
(例)種子板のいれ入り〓し、
−−

 一月二日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕

[#ここから3字下げ]
   初春景物
笹の根に霜の柱をきらめかせ
  うらら冬日は空にあまねし
[#ここで字下げ終わり]

 こういう奇妙なものをお目にかけます。うたよりも封筒をさしあげたいからよ。[自注1]かいた手紙は厚すぎて入らず。
 二日

[#ここから2字下げ]
[自注1]封筒をさしあげたいからよ。――この手紙は日本風の巻紙に毛筆でぱらりと書かれている。歌の行を縫って検閲の小さい赤い印がちらされている。封筒は正月らしい色どりで若松に折り鶴が刷られたもの。
[#ここで字下げ
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