うなら。小さき一つの実行にとりかかりましょう。しかしね、あなたに語るということは、やかましい神様に立願したようなもので、自分を自分でしばることになって、万更無駄でもないのよ。空気に向って語られたのではなく、それは精神に向って語られているのですもの。
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[自注4]よみはじめる本――マルクス・エンゲルスの原典。
[自注5]西村勝三――西村伯翁の弟。
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二月二十一日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕
二月二十一日
おとといはおもしろい雪でした。わたしの心もちでは、まるで咲き開いた花のあつい花びらの上にふりつもった白雪という感じで、全く春の雪でした。
そちらではいかがな風情でしたろう。こちらが花びらの上にふる雪と感じたら、そちらはゆるやかな芝山のまるみを一層まるやかに柔かく見せる雪景色ででもあったでしょうか。若木が深い土のぬくみを感じて幹を益※[#二の字点、1−2−22]力づよく真直に、葉を益※[#二の字点、1−2−22]濃やかにしている枝々に、しっとりと重くふる雪でもあったでしょうか。
木の幹の見事さや独特な魅力を思う
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