ことがあります、「品川の伯父さんは、あれだけの人物でいながら、妙なことを云ったことがあるよ、よっちゃん、おじさんが一生御恩にきるから何とか大将のところへお嫁に行っとくれ、って。後妻だったんだよ。何のつもりであんなことをたのんだんだろう。ことわったがね」。高見順の靴物語もここに小説があるのですがね。バルザックは少くともここいら迄かけました。作家の勉強の大変さがこの一つでも分ります。プティ・クローの仕事をあすこまで学ぶということの意味。作家の資質は飛躍しなければならず、大いに空語でない努力がいります。これらすべて面白い、悠々とした希望にみたされた文学的展望でしょう? 一刻千金というところね。ああ私には今ここをおよみになった瞬間に、あなたの口元に泛んだ苦笑が見えました。こうお思いになったのよ、ブランカ! わかったように云っている。もっともこのことは分った話だが、ね、と。そうね、こうやって読まざるを得ないあなたに、わたしが満々たる計画を語って[#「語って」に傍点]いたところで、いくらそれがあなたにだと云って、やはり筆舌の徒に陥らないということはないわけだわね、こわいこと、こわいこと。では、さよ
前へ
次へ
全357ページ中47ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング