と、自然のこまかさにおどろかれますが、木の幹は決して人間の観念の中にある真直という真直さではないのね。いろいろな天候の圧力や風の角度に対し自身の活動のリズムの複雑さをみたすのに、それは何と微妙な線で美しく変化しているでしょう、そういう美しさと雪の美しさはやはり似合うでしょう?
 雪が冬の終りに降る頃は、天候も春のはじまりのひそめられた華やかさがつよくて。疲れること。
 風邪はおひきにならなくても、熱が出やしなかったかと思って。わたしは何となく二三日おとなしくてぽっとして暮して居ります。用事はどっさりあってね、金曜日から土、日と出つづけでしたが。用事というものは考えると妙ね、だってこころの何分の一かで果せるようなところもありますから。
 土曜はQのところへ行きました。この頃は可笑しいでしょう、本をかしてあげたらあのひとが又がしをして、かりた人がお礼にバタをくれるのですって。それが来たら知らせるからというわけで。行ったところ、バターは消しゴムほどあったわ。そして、文学の話はちょぼちょぼで、やりくり話、家の整理の話等々。今の人のこころもち生活の態度がわかって何だか感服してしまいました。そして
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