屋――荷物疎開のためにさがしていた部屋。
[自注3]大岡山の室――百合子の妹寿江子は大岡山に間借りした。
[#ここで字下げ終わり]
二月十三日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕
二月十三日
きょうの暖かかったこと! そちらもでしたろう。おだやかな日でした。わたしはきょうずっと家にいて、おかしい暮しかたしたのよ。鷺の宮で甥の婚礼で行けなくなったのが却って幸。というのは寿の大岡山の室へ明朝荷を送るについて、きのうは目白来の荷物をあけたら、すっかり鼠が紙をたべていて、せとものはそのままですが、すっかり煮沸しなくては用に立たずというわけ。疲れたからきょうは行かなくて大よろこび。大体きのうガタガタしたから、きょうはかねてたのしみにしている読書いよいよはじめようと、はりきりで心あたりを見たのに、どうしてもなし。これでは折角の十三日だって要するに無意味だと思って悄気《しょげ》て、島田から頂いたアンモをたべていたら、咲が私の古原稿入れてある行李が欲しいというので、其ではと勇気づいて二人で働いて、二人のすべての希望がみたされ、本当に、本当にいい気持となりました。これで十三日らしくな
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