違えなく。
ユーゴーとバルザックとを並べよんで、非常に有益でした。バルザックは柱頭《キャピタル》のない大柱列のようね、しかもその柱はびっしり並んで太くて比較的柔い石の質で、彫刻の刻みめの深い彫りかたで万象の物景がうごめくように彫られています。が、ギリシャの柱列にある柱頭はなくて、従って、天はすぽぬけで青空よ。そこのところが我ながら妙な工合だと見えて、バルザックは、そこのすぽぬけのところを神秘主義でふたして居ります、人間の昇らんとする欲望、より高からんとする意欲、それはさすがにあれも男の中の男にはちがいないから、直感したのです。ユーゴーはそれを人間の社会の中にかえって来る精神において理解し得たけれども、バルザックは其はそれときりはなして精神の問題[#「精神の問題」に傍点]としたのね、だから人間喜劇の中に哲学的考察という銘をうった作があって、其は今日でみれば史的研究でありますが、バルザックはそこにつけ足して、何だか彼のリアリズムで包括出来ない現実の部分を、錬金術師の長広舌や降霊術やにたよっています。
カトリーヌ・ド・メディシスね、あれは三部からなっていて、彼女が王権のために我子もギセイ
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