くね、ブランカがバルザックわきにおいて一首ひねる姿はおなぐさみです。源氏物語をよくよんでみると、式部の小説家としての人生の見かた、描写、大したものです。しっかりしている、しかし沢山の歌はこのように小説の情景を鋭くとらえる人が、とおどろくばかり。品のよいのが只とりえ、間違いのないというところを行っていて、殆ど描写も情の流露もなく、干菓子のようにつまりません。面白いでしょう? だからわたしも余りあなたを悩ませることはいたしますまい。今月はこれで終りよ、即ち

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ふるさとはみぞれ降るなり弟よ南の国につつがあらすな
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 二十二日の午後隆治さんの小包こしらえていたら、音を立ててみぞれがふって来ました。二十三日の前日でわたしの心はやさしくなっていたし、ああみぞれ降るなりと思って、隆治さんの本の間に紙をはさんでかいてやりました。これだって、御元気にね、というだけよりはやはり心の波がうっているでしょう、下作にしろね。
 送って下さった本つきました。
 幻滅は、こちらよ[#「こちらよ」に傍点]。こちらよ[#「こちらよ」に傍点]、折角貰ったのだからどうぞお間
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